【PR】この記事には広告が含まれています。

Raspberry Piを買ったけれど、何に使えばいいのかよくわからない……。そんな方に試して欲しいのが「ファイルサーバー」としての活用です。
この記事ではRaspberry Piを使って、パソコンやスマホとファイルをやり取りできる仕組みを作ります。特別な機器は必要ありません。手元のラズパイ1台で、低コストかつ省スペースなファイル共有環境が実現します。
ファイル共有に便利なファイルサーバー

複数のパソコンやスマホを使っていると、ファイルのやりとりが面倒なことがあります。メールで送ったり、USBメモリにコピーしたりと、操作の手間が気になるものです。
そんなときに便利なのが、ファイルを一か所にまとめて管理できる「ファイルサーバー」です。写真や書類などをこのサーバーに保存しておけば、ほかの端末からもすぐにアクセスできます。ファイルを端末ごとに保存しなくて済むので、スマホやタブレットの容量を節約できるのも大きなメリットです。
Raspberry Piはファイルサーバーに最適

Raspberry Pi(ラズベリーパイ)は、手のひらサイズの小さなコンピューターです。消費電力が少なく、場所も取らないため、24時間ずっと動かしておくのに向いています。
ファイルサーバーは一度設定すれば、あとは電源を入れたままにしておくだけで、いつでもファイルを保存したり取り出したりできます。ラズパイなら電気代をほとんど気にせず、静かに動作させることができます。
準備するもの

ファイル共有を始める前に、必要なものをそろえましょう。
Raspberry Pi 本体
Wi-Fiに対応したモデルであれば、どれでもファイルサーバーとして利用できます。ラズパイ3や4、Zero 2 Wなど、小型で省電力なモデルが扱いやすくおすすめです。常時稼働するので、ケースを用意しましょう。
電源アダプター
電源アダプターは専用品を用意しましょう。汎用品だと電流不足で正常に動作しない場合があります。
モデル名 | 推奨電源 | コネクタ | おすすめ |
---|---|---|---|
Raspberry Pi 5 | 5.1V / 5A | USB-C | おすすめアダプター |
Raspberry Pi 4 | 5.1V / 3A | USB-C | おすすめアダプター |
Raspberry Pi 3A+ | 5.1V / 2.5A | micro USB | おすすめアダプター |
Raspberry Pi Zero 2W | 5.1V / 2.5A | micro USB | おすすめアダプター |
Raspberry Pi Zero W | 5.1V / 2.0A | micro USB | おすすめアダプター |
microSDカード
Raspberry PiではmicroSDカードがOSのインストール先であり、同時にファイルを保存する場所にもなります。お試しで使うなら32GBでも十分ですが、本格的にファイルを保存・共有するなら64GB以上をおすすめします。
また、外付けのHDDやSSDを使えば、OSとファイルの保存先を分けることができます。これにより、システムに不具合があっても、保存したファイルに影響が出にくくなります。外付けストレージは速度や耐久性にも優れているため、ファイルの読み書きをより安定して行えるのも利点です。
OSのインストール

ファイルサーバー専用で使うなら「Raspberry Pi OS Lite」が軽くておすすめですが、今回は初心者でも扱いやすいように、デスクトップ画面付きの「Raspberry Pi OS Desktop(GUI付き)」を使います。Zero WやZero WHを使用する場合は、32-bit版を選択します。
Raspberry Pi OSをインストールする方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
≫【2025年最新版】OSインストールから初期設定まで|セットアップ手順のすべて
Sambaでファイルサーバーを構築
Raspberry Piを使ってファイルサーバーを作るには、「Samba(サンバ)」というソフトを使うのが一般的です。Sambaは、WindowsやMacからもアクセスできる共有フォルダを作ることができるソフトで、無料で使えます。
ここでは、Sambaを使って、ラズパイ上に共有フォルダを作成し、ネットワーク上のパソコンやスマホからファイルを読み書きできるように設定していきます。
Sambaのインストール
まずは、Raspberry Piでコマンド操作をするために「ターミナル」を開きます。画面の左上にある黒いアイコン(ウィンドウに > があるマーク)をクリックしてください。
ターミナルが開いたら、以下のコマンドを入力して、Enterキーを押してください。
sudo apt update


sudo apt update
は、ソフトの最新情報を取得するコマンドです。ラズパイにインストールできるソフトの一覧を新しくして、次のインストール作業を正しく行えるようにします。
以下のコマンドでSambaをインストールします。
sudo apt install samba -y
共有フォルダを作成する
ファイルを保存する場所となるフォルダをつくります。ここでは「share」という名前にします。以下は「/home/pi
フォルダの中に share
という名前の新しいフォルダを作るコマンド」です。
mkdir /home/pi/share

作ったフォルダにファイルを保存できるように、誰でも中のファイルを読み書きできる設定にします。家庭内で使うだけなら、この設定で問題ありません。
chmod 777 /home/pi/share
Sambaの設定ファイルを編集する
先ほど作成したフォルダを、ネットワーク上で共有するための設定を行います。Sambaの設定ファイルに、そのフォルダの場所やアクセス条件を追加します。以下を実行すると、Sambaの設定ファイル smb.conf
をテキストエディタ(nano)で開いて編集できるようになります。
sudo nano /etc/samba/smb.conf
nanoが開いたら、キーボードの矢印キーで一番下までスクロールし、以下のような内容を追加してください。追加したら、Ctrl + O
で保存し、Enter
を押してから Ctrl + X
で終了します。
[Share]
path = /home/pi/share
browseable = yes
writable = yes
guest ok = no
valid users = pi

この設定では、/home/pi/share
フォルダを「Share」という名前でネットワーク上に共有します。browseable = yes
は、他の機器からこのフォルダを見えるようにする設定です。writable = yes
によって、共有先からファイルの書き込みもできるようになります。guest ok = no
は、誰でも自由にアクセスできる状態を防ぎ、ユーザー認証を求める設定です。最後の valid users = pi
は、「pi」というユーザーだけがこのフォルダにアクセスできるよう制限しています。
チェックポイント
OSのインストール時に「pi」ではなく、別のユーザー名を設定した場合は、valid users = pi
の部分を自分が設定したユーザー名に書き換える必要があります。たとえば「user1」という名前で設定していた場合は、valid users = user1
と記載してください。設定と実際のユーザー名が一致していないと、共有フォルダにアクセスできません
iPhoneからのアクセスに必要な追加設定
iPhoneの「ファイル」アプリから接続したときにファイルの保存ができないことがあるため、smb.confファイルの「[global]」という項目に、次の設定を追加してください。
vfs objects = fruit streams_xattr

iPhoneの「ファイル」アプリからSambaに接続すると、ログインしたユーザー名(たとえば「pi」)に対応するホームフォルダ(/home/pi)に自動でアクセスしてしまうことがあります。「Share」フォルダだけを表示させたい場合は、以下のようにsmb.conf
の [homes]
セクションをすべてコメントアウトしてください。

Sambaユーザーを登録する
Sambaにアクセスするためのパスワードを設定します。
以下のコマンドを入力してください。「pi」の部分は、自身が設定したユーザー名に適宜変更してください。
sudo smbpasswd -a pi
コマンドを実行すると、「New SMB password:」ようにパスワードを聞かれます。

ここで、自分が使いたいパスワードを入力します。
例:raspi2025
など、自分で自由に決めてOKです。このパスワードは、Windowsやスマホからファイルサーバーにアクセスするときに使うことになります。
確認のため2回パスワードを入力すると、以下のように表示され、設定が完了します。

Sambaを再起動する
設定を反映させるために、Sambaを再起動します。
sudo systemctl restart smbd
これで、Raspberry Piの中にファイルを共有できるサーバーができました。
IPアドレスの確認
他のデバイスからRaspberry Piに接続するために、IPアドレスを確認しておきます。画面の右上にある電波アイコンにカーソルを合わせると、IPアドレスが表示されます。

パソコンからアクセスする
Raspberry Piに共有フォルダの設定ができたら、次はパソコンからアクセスしてみましょう。ここでは、WindowsとMacの両方から接続する方法を紹介します。
Windowsからアクセスする方法
キーボードの Windowsキー + R
を押して、「ファイル名を指定して実行」ウィンドウを開きます。
「\\ラズパイのIPアドレス\Share
」と入力してOKをクリックします。
(例: \\
192.168.1.159\
Share)

ユーザー名とパスワードを求められたら、ラズパイ側で設定したものを入力します。

ユーザー名は pi
(または自分で設定した名前)、パスワードは smbpasswd
で設定したものです。
接続に成功すると、共有フォルダが表示されます。ファイルの読み書きが可能です。

Macからアクセスする方法
Finder を開き、メニューの「移動」→「サーバへ接続…」を選びます。
「サーバアドレス」に smb://ラズパイのIPアドレス/Share
を入力します。
(例: smb://192.168.1.159/Share
)


接続をクリックすると、ユーザー名とパスワードを聞かれます。
ここも同様に、ユーザー名は pi
(または自分で設定した名前)、パスワードはSamba用に設定したものです。

正しく入力すると、Finder上に共有フォルダが表示されます。

iPhoneからアクセスする
iPhoneからも、Raspberry Piに作った共有フォルダにアクセスできます。iPhoneに最初から入っている「ファイル」アプリを使えば簡単です。
iPhoneで「ファイル」アプリを開きます。

画面右上の「…(三点メニュー)」をタップし、「サーバへ接続」を選びます。


「smb://ラズパイのIPアドレス」を入力します(例: smb://192.168.1.159
)。フォルダ名(例:/
/Share
)を付けても反映されないため、IPアドレスのみを入力してください。

接続方法を聞かれたら「登録ユーザー」を選び、ユーザー名(例:pi)とSambaで設定したパスワードを入力します。

接続が完了すると、共有フォルダが表示され、ファイルの表示・保存ができるようになります。

Sambaが不要になった場合の削除方法
ファイル共有の設定が不要になった場合は、Sambaを削除しておくとすっきりします。使っていない共有機能を放置しておくと、思わぬセキュリティリスクになることもあるため、必要がなくなったら整理しておきましょう。
Samba本体を削除します。ターミナルを開いて、以下のコマンドを実行してください。
sudo apt remove samba samba-common -y
これでファイル共有機能が無効になります。